ネット・バカ
「ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること」
インターネットと人間の関係についてに非常に興味があり、最近はその手の本を集中して読んでいる。
著者のニコラス・G・カーは「クラウド化する世界」などで有名な物書きであり、彼のスタンスはどちらかといえば、インターネットは悪い影響を当てるのではないか?というものである。
そんな著者の背景に加えて、このタイトルである。
ネットに対する嫌悪と妄想からなる本として捉えられても無理のない話だ。
しかし、この本で描かれるのは、そんなおぞましい感情の吐瀉物とはかけ離れた繊細で緻密な論理の積み重ねである。
彼はとある問題に答えようとしているだけなのだ。
その問こそ
「インターネットが我々の脳にどんな変化をもたらしているのか?」
である。
脳は変化するものであるという脳科学の事実から、デバイスがもたらしてきた我々の知的習慣の変化を丁寧に紐解き、我々の脳に起こっている不可逆的なこの進行の正体を明らかにしてくれる。
もしあなたが「以前よりも、なぜだか分からないが物事に集中して取り組むことができなくなった」というもやもやした感覚に覚えがおありならば、ぜひ一読すべき価値のある本である。
霞がかかった視界がきれいに晴れ渡ることだろう。